Vol. 5

パン屋の仕事は甘くない。長野県東御市の「パンと日用品の店 わざわざ」が一緒に働きたい人物像とは【前編】

2016年12月4日、今年で3回目となる「パンと日用品の店 わざわざ」のトークイベントが、新潟県燕市ツバメコーヒーで開催されました。

お話いただいたのは、わざわざの店長、平田はる香さんです。

2009年に長野県東御市(とうみし)の山の上にオープンしたわざわざ。国産小麦や自家製酵母を用い、窯で焼き上げたパンが評判を呼び、今や全国からファンが訪れるほどの人気のお店です。
最近では、お店の働き方についての投稿が、Facebookやインスタグラムで1日1000以上のいいねがつくなど、その働き方に注目が集まっています。

イベント進行役は、会場でもあるツバメコーヒーの店長、田中さん。
スタッフの採用でとても苦労されたというわざわざの平田さんに、失敗談をうかがうところからイベントがスタートしました。

採用面接だけでは、その人の性格を見抜けない

わざわざ 平田さん これまでのわざわざの採用基準は、“仕事ができるかどうか”というところに焦点が当たっていたんです。だから面接をしても、人間性までは見れていなかったんですよね。
失敗を経験して、これからは面接とは違う採用システムを取り入れなければと考え直しました。だって、面接に来る人はみんないい人に見えてしまうんですよ。見えませんか(笑)?

ツバメコーヒー 田中さん まぁ。少なくともここに来ている人たちはいい人に見えますよね(笑)。

会場 笑いが起こる

わざわざ 平田さん そうですよね(笑)。面接をすると、どなたもキレイな恰好で、きちんとしていますよね。丁寧に書類を書いて、受かりたいという気持ちのベストな状態で来るので、ほぼ優劣をつけられないんです。だから本当の性格までは私にはわからないんですよ。

それで、面接ではなく仕事体験の取り組みを始めて、応募してくれた人全員に、とにかく1日働きに来てくださいと言ったんです。
1日8時間や、5日〜10日間働きに来た人もいたんですけど。そうしたらそれがすごく面白かったんですよね。ひとりひとり全然働き方が違う。本当に色んな人が来て、あれは一体何なんでしょう!?

ツバメコーヒー 田中さん いや、そう聞かれても、まさかこの会場に仕事体験に行った人は来てないと思いますけど(笑)。

わざわざ 平田さん そうですよね(笑)。仕事体験に来た人の年齢層は本当に幅広くて、高校生や大学生、50代の人までいたんです。
でもお願いする仕事内容は全部同じなんです。パンの計量をしたり、お皿を洗ってお掃除をしたり、本当に基本のところだけ。それと、まかないを一緒に食べながら、食べる様子を見たりして。

ツバメコーヒー 田中さん ごちそうさまが、言えるかとか?

わざわざ 平田さん いや、そこまでは見てないですけど(笑)。

仕事体験で明らかになった人間性

わざわざ 平田さん まかないを一緒に食べるにしても、7、8人のスタッフのなかにポコンとひとり、仕事体験の人がいきなり入るわけですよね。
そのなかには、一生懸命、会話を取り繕おうとする人や、全然コミュニケーションを図れない人とか、多種多様でしたよ。これでもかというほど、人間性が丸見えだったんです。

ツバメコーヒー 田中さん 面接よりいい?

わざわざ 平田さん かなりいいですよね。コミュニケーション能力が高い人は、スタッフみんなとすぐに仲良くなります。LINEやFacebookで友達になって、仕事体験が終わった後も関係性が続いていったり。
そういう人じゃなくても、きっちりと挨拶をしてみんなから評価を得る人や、一方でほとんど口を聞かないで帰っちゃう人もいます。

でも、それを半年ぐらい運用していったら、だんだん仕事体験をする人の傾向がおかしくなってきて。「なんか長野の方で、1日働けるらしい」と噂になってしまったんです(笑)。最初は働きたいという目的の人がちゃんと来ていたんですけど、雑誌に取り上げられたりもして、旅行のついでに来る人もいました。

ツバメコーヒー 田中さん 旅行のついでに仕事体験ですか!?

仕事体験の取り組みで、スタッフが疲弊していった

わざわざ 平田さん そうなんです。「旅行で軽井沢に来ているので、明日ちょっとお店を見たいんですよね」って来たりとか。仕事体験に来る人の系統がだんだんと変わってしまって。そうすると、1日お店をとっ散らかしていくので、スタッフみんなが疲れていくんですよ。

ツバメコーヒー 田中さん でしょうね(笑)。

わざわざ 平田さん それからは本当に就職したい人だけを限定して受け入れるようにしました。こちらとしては、楽しんで帰ってもらおうという気持ちがあるので、仕事体験に来た人を放って仕事をすることはないんですよね。ただ気をつかって仕事をしていると、二重で疲れてくるんですよ。それでもう仕事体験の募集をやめることにしました(笑)。

結局、延べ50人ぐらいの人が仕事体験で来て、そこから2人を採用したんです。長く一緒に過ごしたので、お店に入ってからもうまくいって、良い取り組みだったんですけど。今後それを続けるのはもうないなって。体力が持たないですよね。

ツバメコーヒー 田中さん 面接がだめで、仕事体験もだめで。次なるものを考えなければと?

わざわざ 平田さん それが、わざわざの本を作ることだったんです。

『パン屋の仕事は甘くない。長野県東御市の「パンと日用品の店 わざわざ」が一緒に働きたい人物像とは』の後編はこちらからご覧ください。

暮らしミタ人

平田はる香さん

平田はる香さん

「パンと日用品の店 わざわざ」は、山の上に店があることから、通りすがりで来る事はまずあり得ません。
「わざわざ来る価値のあるお店」であることを常に意識し、来ていただいたお客様に感謝の気持ちを忘れず、来て良かったと言われる店づくりを心がけています。
http://waza2.com/

Writer

五十川 ルリ子
この記事を書いた人
五十川 ルリ子

新潟県在住。食べることやカフェめぐりが大好き。自ら足を運んで惚れ込んだお店や、魅力ある人へ取材をしています。

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